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労働災害はなぜ起こるのか? その原因と事故が減る対策を解説!

労働災害はケガや病気、ときには死亡事故にいたることもある重大な災害です。明日でも起こりうる労働災害について知見を深めることで、事故を減らすことができます。「労働災害の原因は?」「どうすれば労働災害を減らせるの?」という疑問に答えます。

ときに尊い人命を奪うこともある「労働災害」ですが、厚生労働省の調べでは、平成30年度の労働災害による死傷者数は12万7,329人に上りました。危険は至る所に潜んでおり、労働従事者はいつどこで労働災害に合うか分からないため、「何かできる施策はないものか」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。


未然に災害を防ぐためには、事業者と就労者全員が労働災害に関する理解を深め、危険を認識して企業全体で災害防止に取り組むことが必要です。ここでは、労働災害の基礎知識はもちろん、災害が起きてしまう原因や、企業で取り組むことのできる災害防止対策、災害が起きた場合の保険制度についても解説していきます。



労働災害とは就業中の負傷・疾病・死亡を指す  


「労働災害」とは、労働者が、「仕事中、仕事によって」被った、負傷、疾病、死亡を指します。勤務中だけでなく通勤中の災害も含まれることが特徴で、一般的に「労災」と略されて呼ばれています。労災は2つの要因で判断されますが、大きく分けて2種類あります。


労働災害は2つの要因で判断される  


労働災害とは、就業中に発生したケガや病気、死亡のことを指しますが、仕事中に発生した死傷病全てが、労働災害と認められるわけではありません。労働災害は、以下の2つの要因で判断されることが一般的です。


つまり、業務と労働者が負った災害との間に何らかの因果関係がある場合に、労働災害が認定されます。


労働災害は大きく2種類


労働災害は、大きく「業務災害」と「通勤災害」の2種類に分けることができます。


業務災害


「業務災害」とは、業務上の負傷、疾病、障害、または死亡を言います。労働者が労働契約に基づき、事業主の支配・管理下で業務に当たる「業務遂行性」と、仕事と災害の間に何らかの因果関係がある「業務起因性」、この2つの条件を満たすと業務災害と認定されます。


休憩時間や食事中などに発生した災害は、業務災害には当たりませんが、休憩中に事業所の設備管理の不備によって、手すりの壊れた階段から転落負傷した場合などは、労災が認められます。「仕事中に仕事が原因で起こった事故」が業務災害に当たりますが、休日に脳梗塞を発症した場合でも、業務に起因する疾病であると判断された場合は、労災に該当します。


また、飲酒などの著しい私的行為が認められる場合を除き、「出張中」の災害も、事業主の支配下での業務と見なされて業務災害が認定されます。


通勤災害


「通勤災害」とは、自宅と会社の往復中に負った、負傷、疾病、障害、または死亡などの災害のことです。通勤中に駅の階段から転落したり、自動車事故などで負ったりしたケガなどが、通勤災害に該当します。しかし、仕事終わりに飲酒をして、帰宅途中に起きてしまった災害に関しては、合理的な経路から外れていると判断されて、通勤災害とは認められていません。


ただし、日用品の購入や通院、公衆トイレに立ち寄るなどの「日常生活に必要な行為」は、その後、合理的な経路に戻れば、通勤災害として取り扱われます。なおその場合は、通勤行為に戻ってからの災害が通勤災害に該当することに注意しましょう。




【最新】労働災害の発生状況


厚生労働省が毎月発表する「労働災害発生状況」によると、2019年1月~2019年7月までの労働災害の発生状況は、死亡者数、378 人 (前年比11.7%減少)、休業4日以上の死傷者数は 58,304 人(前年比3.2%減少)です。


前年比では減少しているものの、墜落・転落による死亡災害が最も多く、休業4日以上の死傷災害についても、転倒をはじめ、墜落・転落による事故が依然として多くを占めています。一方で、「動作の反動・無理な動作」での災害は、前年に比べて5.3%増加していることが特徴です。


【死亡災害の発生状況】

【休業4日以上の死傷災害の発生状況】





労働災害が発生してしまう原因


労働災害が発生してしまう原因には、労働者の「不安全行動」と、機械や物の欠陥やメンテナンス不足などから引き起こされる「不安全状態」があります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。


労働者の不安全な行動


労働者の「不安全な行動」で引き起こされるヒューマンエラーは、不慣れ・不注意・疲労など、さまざまな要因によって引き起こされます。また、「時間がない」「面倒」「みんなやってるから」など、時間やコスト、手間などを省くことを優先させた結果、労働災害に発展するケースも多いようです。


さらに、「経験が長いから大丈夫」「自分が事故を起こすはずがない」といった、油断や過信が事故を引き起こすことも少なくありません。厚生労働省では、「労働者の不安全行動」として、以下の12項目を挙げています。


  • 防護・安全装置を無効にする

  • 安全措置の不履行

  • 不安全な状態を放置

  • 危険な状態を作る

  • 機械・装置等の指定外の使用

  • 運転中の機械・装置等の掃除、注油、修理、点検等

  • 保護具、服装の欠陥

  • 危険場所への接近

  • その他の不安全な行為

  • 運転の失敗(乗物)

  • 誤った動作 その他

機械 / 物の欠陥やメンテナンス不足


環境的要因である「機械や物の不安全状態」も、労働災害が引き起こされる原因のひとつです。機械や物の欠陥、メンテナンス不足の他に、作業環境や作業方法の欠陥も不安全状態に該当します。以下は、厚生労働省が、「機械や物の不安全状態」として挙げている8項目です。

  • 物自体の欠陥

  • 防護措置・安全装置の欠陥

  • 物の置き方、作業場所の欠陥

  • 保護具・服装等の欠陥

  • 作業環境の欠陥

  • 部外的・自然的不安全な状態

  • 作業方法の欠陥 その他



労働災害を防止する対策方法


労働災害を防止するためには、労働者の安全と健康確保のために制定された「労働安全衛生関係法令」を守り、法令に従った対策をとることが基本です。事業者の責務である労働安全衛生関係法令の順守を、以下で紹介します。


1. 安全教育プログラムの実施  


従業員を雇用した際は、就業中の災害を防止するために、以下のような「安全教育プログラムの実施」が事業者に義務づけられています。

  • 機械、原材料、保護具などの取扱方法

  • 作業手順

  • 事故時における応急処置

なお、危険を伴う小型ボイラーなどの取り扱い作業や、有害な業務の場合は、その業務に関する特別な教育を行う必要があります。また、安全教育コンテンツをプログラムに取り入れることも効果的でしょう。


「ZIKOZERO」は、実際に起こった労災事故を疑似体験することで、事故を未然に防ぐという安全教育コンテンツ配信サービスです。リアルに再現した労災事故のCG映像が特徴で、従業員の危険意識を高めるメリットがあります。



2. 安全衛生管理体制の整備


「安全衛生管理体制の整備」も、災害を防止するための重要な措置です。危険防止のための対策や教育のほか、健康診断などの安全衛生業務を担当する「安全衛生推進者」、または「衛生推進者」を選任しましょう。


また、プレス機器など、危険で有害な作業を伴う場合は「作業受任者」を選任し、作業者の指揮や機械設備の点検などを行います。従業員の現場の意見をしっかりと聞いて情報を共有し、安全衛生対策の方針を決めることが大切です。


3. 危険防止ルールや管理システムの確立


労働災害は、労働者の心構えや意識だけで防止することは難しいといえます。労働災害を防ぐためには、「危険防止のルール」作りや「管理システム」の確立が不可欠です。


例えば、機械の動作範囲に体の部位が入ってケガをしないように「柵や覆いなどを設る」という決まりや、火災や爆発の危険性のある物を取り扱う場合は、「火気を使用しない」などのルール作りを徹底しましょう。


続いて、こうしたルールを踏まえてシステムを作っていきます。現場の生の意見を聞き、これらのルールを評価して問題点があれば、分析して改善案を策定します。その改善案をさらに実施、評価、というフィードバックを通じて、システムを確立させていくことがベストな状態です。


4. 健康診断をはじめとした健康管理の実施


就業者には、年1回の定期健康診断、6ヶ月に1回の特殊健康診断(従業員に有害な業務に就かせる場合)を、実施することが義務づけられています。


また健康診断の他にも、社内でのレクリエーション活動やカウンセリングなどを行うことで、職場でのストレスを軽減し、安全に作業に向き合える環境づくりを整えることができます。





最低限やっておくべき労働災害の防止対策


最低限やっておくべき労働災害の防止対策を、いくつか紹介します。まったく安全活動を行っていない場合は、ここで紹介する活動をまず行ってみましょう。


1. ヒヤリ・ハットの周知・共有


「ヒヤリ・ハット」とは、「作業中にヒヤリとした」「ハッとしたが、幸い災害には至らなかった」という、事故の一歩手前の危険な出来事を指します。ヒヤリ・ハットは実際に事故が起きていないため、軽視されがちです。


しかし、危険を感じた事例をできるだけ多く集めて周知・共有することで、重大な災害を未然に防ぐことができる災害防止活動です。


2. 危険予知活動を行う


「危険予知活動」とは、現場や作業に「どのような危険が潜んでいるのか」という危険要因と、それにより発生する災害について、事前に話し合うことで災害を防止しようというものです。


作業状況を描いたイラストなどを用いて行う方法もあり、作業者の危険に対する意識を高め、災害を未然に防ぐ効果が期待できます。


3. 安全当番制度を実施する


「安全当番制度」とは、職場の安全ミーティングの進行役や安全パトロール員を、当番制で従業員全員に担当させて、未然に労働災害を防止するものです。


従業員の安全意識(当事者意識)を高めるのに有効で、従業員同士のコミュニケーションも活発になるという効果があります。



労働災害が起きた場合の保険制度について


「労働保険」は労働災害が起きた際に、労働者やその家族を保護するための公的保険制度です。雇用形態にかかわらず、労働災害と認定されれば一定の保証を受けることができます。

仕事中のケガや病気の場合には「補償」という言葉が付き、通勤中の場合は「補償」という言葉は省かれますが、手続き方法なども若干異なるので注意が必要です。


療養補償給付・療養給付


「療養補償給付」「療養給付」は、ケガや病気で療養が必要と判断された場合に給付されるものです。労災と認められれば、以下のような補償を受けることができます。

  • 診察料

  • 薬剤・治療材料費

  • 処置・手術費

  • 入院費

  • 訪問看護費

  • 必要と認められる移送費


休業補償給付・休業給付


「休業補償給付」「休業給付」は、仕事や通勤中の災害で休業せざるをえない就業者が、賃金を受けられないときに支給される補償です。支給されるのは4日目からで、1日につき給付基礎日額の60%と、休業特別支援金として給付基礎日額の20%の計80%が支給されます


また、休業4日未満の労災については、労働保険によってではなく、労働基準法でも定められているように、事業主が平均賃金の60%を支払わなければなりません。なお、給付金をもらえるのは、医師が証明した期間のみです。


それ以外の保険給付


上記で紹介した以外にも、保険給付には、以下のようなものがあります。





労働災害の安全対策を行い、事故を減らそう!


労働災害を防ぐためには、事業者と作業員が一丸となり、安全対策に取り組むことが何より重要といえます。そのためにも、企業全体で労働災害に対する意識を高め、知見を増やすことが大切です。


労働災害を完全に防ぐことは難しいかもしれませんが、企業の取り組み次第では、起こりうる事故を未然に防ぐことができます。法律で義務付けられている取り組みの他に、企業それぞれの事情に合わせた安全対策を取り入れ、積極的に労働災害を防止しましょう。


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